バードの麻雀雑記帳

天鳳(チャオってなければ鳳南に居ます)やその他の麻雀記事を集めた雑記帳です、乾きまくった麻雀砂漠に水を掛けてやりたい…

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ラストスマイル 第7話

横浜で普通電車に乗り換えると、五分ほどで最寄り駅に着いた。

よく「どうしてこの街に住んでいるの?」と聞かれることがある、そう聞かれるのは周りの環境がお世辞ににもいいとは言えないからだ。様々なネオンが輝く風俗店や怪しい店がひしめく街、確かに学生の一人暮らしには向かないだろう。

ならどうしてこの街に住み始めたかというと大学受験に来た時にこの街のホテルに泊まったから、というものでしかない。初めて来た時のこと、予備日が一日あって近所のパチンコ店に行ったら当時の小遣いの十ヶ月分のコインをスロットマシンが瞬く間に吐き出した。それで焼き鳥屋でビールとコップ酒で祝杯をあげたのを覚えている、それで大学に受かったらその時のたまたまでしかない出来事が印象に残っていてこの街に住むことにした、それが真相だ。

あぁ、彼女と最初に飲んだのも焼き鳥屋だったなと思い出す。彼女も同じことを聞くんだろうか?

「いいねいいね、この感じ。なんか猥雑でさ。私、こういう雰囲気好きだな。いかにもアウトローが住む街だよね」

大方予想は出来たがやはり、彼女は今まで出会ったどの女性の感性とも違うらしい。

「ちょっと、オレは別にアウトローを気取ってる訳じゃないから」

慌ててそう言うと

「よくそんなこと言うよね」

と返して笑う。「まいったな」なんて言ったものの確かにオレもこの街の雰囲気は嫌いではない、アウトローかどうかは別にしてもこの街は自分に合っているような気がしていた。

「まだ歩く?ちょっと買い物したいな、お世話になるからお酒でも一本買っていくよ。あっ、これは絶対ね」

「もう着くよ、けど途中にスーパーがあるからそこに行こう。酒かぁ、カンパリって好き?」

「美味しいよね、好きだよ」

「じゃあそれをお願いします」

彼女のことは何も知らない、ただ言い出したらそれを曲げない印象があったので素直に甘えることにした。

スーパーに着く、コンビニ程の広さしかないが値段が安いから週に最低三回は利用している店だ。酒のコーナーに行くと、カンパリの大瓶がいつもの場所に置いてあった。

「この店はいつ来てもカンパリを置いてくれているんだよ」

「えっ、どうして?」

確か―、数ヶ月前の話だったと思う。帰りに寄ったらカンパリが無い、それで店員さんに尋ねたことがある。倉庫辺りにないかなと思っていたら在庫切れとのこと、なら諦めるのだが平身低頭に詫びられた。

それで、次回にこの店に来た時同じ店員さんに「カンパリ入荷しました」と告げられる。それ以来、この店にカンパリが無かったことはない。

こんな話をすると彼女は「いいお店じゃない」と頷いた。

「いや、多分この店では<カンパリ君>とか呼ばれてるんだろうな、それはいいことか分からないよ」

そう言うと彼女が吹き出す、そして「もう、笑わせないでよ!」と肩を叩く。そんなこんながあって、カンパリとちょっとしたつまみを買うと店を後にした。

「ここだよ」

スーパーから歩いて一分のマンションに着く、何の変哲もないワンルーム・マンションだ。

オレの部屋は六階にある、エレベーターに乗った。

「…」

オープンな空間なら軽口も叩ける、だが極端に狭いこんな空間だとなぜか緊張してしまう。これも自分の困ったタチだった。

無言のまま部屋の前に着く、鍵を開け「どうぞ」と彼女を先に入れた。

「お邪魔します」

彼女が中に入っていく、入り口にあるスイッチで電気を付けた。

そういえば―、女性がこの家に来たのは三ヶ月ぶりか。大恋愛(といっても二年程だが)をした大学の同級生が来た時以来だ、実は今日キャンパスで「会いたくないな」と思っていた。

「私と麻雀どっちが大事なの?」なんて聞かれたことがある、それに対して「比べる次元が違うからなぁ、どっちも好きだとしか答えようがない」などとのたまったものだから揉めた。

「嘘でもいいから私ってどうして言ってくれないの?」こんな言葉を残して彼女はオレの前から居なくなった。

結局、どこまでも誠実であろうとした彼女とどこまでも不誠実な自分が分かり合える訳もなかったんだろうな、と今になって思う。

だがこんなことを思う一方、失恋の痛みというのも人並みには感じていたようで、それを忘れるためかとでもいうように麻雀狂いがさらに加速したのだった。

じゃあ―セナはどうだろう?麻雀狂いなオレを嫌うだろうか?いや、むしろ好きになってくれはしないだろうか?何も知らない彼女にそんなことを期待する自分も居た。

「男のコの一人暮らしにしては綺麗な方じゃない?及第点かな」

ほんの数秒の間だった思う、彼女の言葉で回想から現実に引き戻された。

「そう?ほとんど最近居ないからね。あっ適当に座って」

彼女はパソコン机の椅子に腰掛けた。オレは酒と割り物しか入っていないような冷蔵庫から必要なものを取り出し二人分のカンパリ・オレンジを作って彼女に手渡した。

「乾杯」

どちらからともなくそう言ってグラスを重ねる、しばらく取り留めの無い会話をしつつ酒を飲んでいた。

ふと、彼女がパソコンを指差し言う。

「ねぇ、このパソコンってインターネット出来るの?」

「もちろん」

そう答えるといつもの笑みで

「じゃあ麻雀も出来るよね?」

こう言った。

「出来るよ。ちょっと待って」

パソコンの方に行く、そういえば今日はオレのせいで二本しか打てなかったのだった。彼女クラスは二本程度で満足する訳もない。

「最近ネトマで仕掛けの練習してるんだよね、じゃあ麻雀観変わるような愚仕掛けでもご披露するするかぁ」

そう言ってパソコンの電源を入れる、飲みながら打牌の品評会をするのも悪くない。

「じゃあ代わりばんこに打ちますか?」

いつも遊んでいるサイトにログイン。

長い夜は、まだまだ始まったばかりだった。
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訪問ありがとうございます、天鳳やその他麻雀関連のブログです。天鳳で起こった出来事や麻雀を軸とした物語を実話だったり想像で書いています。天鳳ID:焦燥のバラッド(八段、鳳南民)

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