バードの麻雀雑記帳

天鳳(チャオってなければ鳳南に居ます)やその他の麻雀記事を集めた雑記帳です、乾きまくった麻雀砂漠に水を掛けてやりたい…

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ラストスマイル 第5話

「ちょっといい?」

麻雀に集中していたオレの肩が叩かれる、ママだった。入り口の方を顎でしゃくる、どうやらこっちに来いということらしい。

雀荘の扉を出るとママが渋い顔をして立っていた。

「あのコって?」

唐突な質問に戸惑う、それに―、何て答えていいのかも分からなかった。

「あぁ、最近仲良くさせて貰っているんですよ。」

無難な返事をする。

「何してるコなの?」

「いや、知りません」

「知らないの?じゃあなんで一緒に来たの?」

「一緒に麻雀しようって話になってじゃあいつも来ているここに来ようかと、それで来てみたんです」

「アンタたち付き合っている訳?そもそもなんで知り合ったの?」

「付き合ってるというか…、池袋でたまたま同卓してその後たまたま一緒に飲みに行って、そのまま一緒に泊まったんですよね」

矢継ぎ早に質問をされて面食らいながらも正直に答える、答える内にそういえば彼女のことを何も知らないんだなと思う。

ママはウンザリしたような顔をしている。

「アンタねぇ、あのコだけはやめときなさい。あのコはなんであんなに麻雀が達者なの?相当やっているわよ、麻雀に狂った女のコになんてロクなのがいないんだから」

断言するように言う。麻雀人口の比率で男が圧倒的に多いから女性が目立つだけだろうと思う、こんなゲームで身を持ち崩すのは男の方がよっぽど多いだろうと思ったが黙っておいた。

「いい?あなたは前途ある身なんだから変なコに引っかかっちゃダメなんだからね」

諭すように言う、ママやマスターはよくこんなことを言ってくれるのだが自分ではどうしてもそうは思えなかった。人生という一番大きなゲームの中のかなり重要な場面で、こんなゲームに狂っている奴に前途なんかある訳がないだろうと思う。

ただ、子どもの居ないマスター夫妻が息子のように可愛がってくれているのも知っている。その感情を察すると余計な心配を掛けるのも本意ではなかった。

「これからいろいろなこと知って行きたいなぁと思っているんですよ、ぶっちゃけどんどん彼女のことを好きになっているんです」

オレの言葉にまたママは眉をしかめる。

「いい?今日はもう帰りなさい。悪いけどあのコと来たってうちでは打たせられないから」

宣言するように言うと、もう話は終わりだと言わんばかりにママは店に戻って行く。理不尽なものを感じないでもなかったがオレも続いて店に入った。

「すいません、これでオレら帰るんでラス半にしてください」

戻るなりそうマスターに言う、皆「えっ?」という顔をする。

「どうしたの?まだ二本目だよ?」

彼女が聞いてくる。

「いいからさ、これで帰ろうぜ」

少し語気を強めてそう言うと彼女は小さな声で「分かった」と言った。こんなやり取りがあったからだろうか、さっきまで笑いに包まれていた卓はすっかり静かになってしまった。

そして―、彼女はラスを引いて黙って席を立った。

店を出て「ゴメンね」と彼女に言う、彼女は急なラス半の理由を聞こうとはしなかった。

「ちょっと飲むには早いな、五時からなら安いとこ知っているんだけど。今日は急に麻雀終わりにしちゃって申し訳ないから奢るよ、さっきのラス分くらいは飲んでいいよ」

気まずい空気をかき消すようにそう言うと彼女は少し微笑む。

「じゃあ五時まではいいんだよね、そういえばさ、君の大学ってここから近い?」

あまり気を悪くはしてないようで一安心した。

「行けなくはないよ」

質問の意図がいまいち分からない

「今から行ってみようよ、私すごい行ってみたいんだ」

気まずさなど最初から無かったように笑顔で言う

「いいけど、特に何も無いよ」

「いいの、行こう」

手を引かれて大学に向かうことになった、徒歩で二十分くらいの距離を歩く。麻雀の話はしたくなかったから違う話でお茶を濁していた。

大学に着く、キャンパス内には多くの学生が居る。時計を見るとちょうど休み時間だった。彼女を見ると珍しげに辺りに視線を走らせている、オレは―、いつも通り特に何も感じなかった。

大学生って普段どうやって過ごしているのだろう?入るまではみんなテニスでもやってるのかと思ってた、けど実際はそんなこともないらしい。一つだけ思うのはオレとは違う時間が流れているんだろうなということ、「どちらが幸福なんだろう?」通り過ぎる同級生たちを見つめながらそんなことを考えていた。

「キャンパスに来たの久々だな、私の大学とは違うね」

一通り眺め終わった彼女が言う

「あぁ大学生だったの?」

先程も言われたことだがやはり彼女のことは何も知らない。

「去年まではね、中退。○○女に行ってたよ」

国立の女子大の名前を言われた、オレの大学なんかよりよっぽど上等なところだった。

「後学のためにどうして辞めたのか聞いていいかな?もしや麻雀が原因だったりして?」

冗談めかして聞く

「残念ながら麻雀じゃないんだなぁ、私さ、女の子と居るの嫌いなんだよね。なんでも一緒にしなきゃ落ち着けない人ってのが実に多いんだ。そういうのに出来るだけ関わらないようにしてたんだけどクラスとかあって中々難しくてさ、だから面倒になって辞めちゃった」

あっけらんかんとした顔で言う、あまりにさっぱりし過ぎていて思わず笑ってしまった。

「なんか君らしいね、よし、そろそろいい時間だからもう飲みに行こう」

「奢ってくれるんだよね?」

「言ってしまったものはしょうがない、ただし七時までね。」

「何それ?まぁいいや」

大学を出て品川駅まで歩いて戻る、プリンスホテルに併設している行き着けのアメリカン・バーへ行った。

「いらっしゃ…、あぁいつもどうも。カウンターですか?」

顔なじみのバーテンに聞かれた

「うん、二人」

席に案内される、まだ時間が早いこともありカウンターは空いていた。

「カウンターなんだね?」

席に着くと彼女が聞いてくる

「うん、実は七時までがハッピー・アワーでドリンクが安いんだ」

「なるほどね」

納得したようだった。

「いらっしゃいませ、今日は違う女性と一緒なんですね」

別の顔見知りのバーテンがニヤニヤしながらそう言っておしぼりを出してきた。

「あのねぇ、おしゃべりなバーテンが居たら即刻死刑に出来るって法律がもうすぐ施行されるって知らないの?君なんかすぐ終わりだよね」

歳が近いというのといつもオレが一人で来るからよく話すようになった、しかしだからといって余計なことをしゃべられてもかなわない。

「へぇ、そうなんですか。でも一緒に来る女のコも居ないような人よりよっぽどマシだと思いますよ」

彼女が言う、本心かどうかは分からなかったが早速気まずくなりそうだったから救われたような気になった。

「いいから生のパイント二つ持ってきてよ、あっ、それとあとでフレア見せてあげて」

「かしこまりました、新技があるのでご期待ください」

そう言ってようやく彼は居なくなった。

「何?フレアって?」

彼女が聞いてくる

「バーテンが瓶をクルクル回したりするの知らない?彼のトークはイケてないけどフレアは上手でさ、世界大会に出るのが夢なんだって」

「あっ、あれ?生で見るの初めてだな、楽しみ」

笑いながらそう言った。一人で飲んでいる時によく見せてくれる、素人目に見ても彼の技がすごいことは分かった。新技を成功させたりするとドリンクを出したり、最近ではフレアを見るのもここに来る楽しみになっていた。

「お待たせしました」

ビールが運ばれてきて乾杯、いつものことだが炭酸が食道を焼くような感覚が心地いい。

「さっき雀荘でさ、奥さんに何か言われたの?」

まだビールに口を付けたばかりのタイミングで唐突に聞かれた

「あっ、うん…。君のことをなぜか聞かれてさ、何も知らないって言ったら呆れてたよ」

卓に集中しているかと思ったら気付いていたらしい、何て返したらいいか咄嗟には考えることも出来ずありのままを答えていた。

「そうだったんだ」

そう言って彼女がこちらを向くのが横目で分かった、オレもそちらを見ると彼女の大きな目と視線がぶつかる。

「ねぇ、もっと私のこと知りたい?」


「えっ?」

またなんて答えていいか分からないようなことを聞かれる、今日はそんな質問をよく受ける日らしい。オレは―どうしたいんだろう?

返事に詰まる。だがこの時一つだけ確信していたのは―

七時で帰るという選択肢だけはなさそうだなってことだった。
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訪問ありがとうございます、天鳳やその他麻雀関連のブログです。天鳳で起こった出来事や麻雀を軸とした物語を実話だったり想像で書いています。天鳳ID:焦燥のバラッド(八段、鳳南民)

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