バードの麻雀雑記帳

天鳳(チャオってなければ鳳南に居ます)やその他の麻雀記事を集めた雑記帳です、乾きまくった麻雀砂漠に水を掛けてやりたい…

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ラストスマイル 第3話

ピピピピピピ…

無機質な携帯のアラームで目覚める、今度は寝過ぎたのか今日も頭が痛い。

時計を見るとそろそろ昼という時間、「あぁまた語学の授業に行けなかったな」と思い出す。だがまだ欠席は二度目だ、三回まで休んでいいというならギリギリまで休まない手はない。それに、そもそも授業に行ける時間にアラームをセットしていないのだから最初から行く気がないんだろう。

午後からの少しだけ興味のある講義でも聴きに行くかと思う、準備をして家を出た。

電車での道すがら手帳を取り出す、麻雀の収支と簡単な感想を書いているものだ。おとといからか、<池袋、+一万、セナと打つ>。

ふと、自分の書いた文字に引き込まれる。

<セナ>

おとといたまたま同卓した女のコ、一つ年上らしい。誘われてそのまま飲みに行ってなぜか寝てしまったのだった。

それで昨日も一緒に麻雀打ちに行ってゲーム代負けしてきた、平均着順は彼女の方が上だ。その後また韓国料理屋で飲んでマッコリのカメを五個くらい空けて終電で帰ってきた。

あれは現実の話なんだろうか?そんなことを思う。だがポケットから携帯を取り出し電話帳を見ると彼女の名前は確かにあった。「何か気の利いたメールでも送ろうか?」こんなことを思うものの、なんて送っていいか分からない。

いろいろ思案していると品川に着いてしまう、電車から降りるとさっきまでの自分がなんだかとてもバカらしくなってしまい大学とは逆の出口から出た。

オフィス街のあるこちら側に何か特別なものがある訳ではない、自然と足を向けたのはまた雀荘である。本当に自分でも愚かだと思う、だが学校や見えない将来、おととい会ったばかりの彼女のことで悩んでいるくらいなら牌を握っているほうが気は楽だった。

結局―、この日も自分にそんな言い訳をして雀荘の扉を開けた。

「おぉ…いらっしゃい」

マスターが迎えてくれる、この店は五十代の夫婦がやっている店だ。子どもが居ないらしく普通の雀荘ではありえないほどオレはよくしてもらっていた。

初めて来た時だったろうか、マスターに聞かれたことがある。

「学生?うちは学生あんまり来ないんだけどどうして入ってみようと思ったの?」

こんな質問をされた。

「えっ?麻雀って看板が出てたからですけど…」

思ったままを答えると

「ハッハッハ!そこに麻雀という看板があったからか、うん、こりゃいい。傑作だ」

そこまで面白いとも思えなかったがこんなやり取りで気に入られたらしかった。

マスターとはこんな話をしたが<ママ>には最初からよくして貰っていた、当時はいつも青っちょろい顔をして打っていた。心配したママが手製の料理をサービスで振舞ってくれたことがある、それを「美味い美味い」と綺麗に平らげてから気に掛けてくれるようになった。

とにかくこの雀荘、今まで通ったどこの店とも異質だったのである。ご飯はいつもタダだし帰りには「アンタは外食ばっかりだから」と保冷剤で包んだタッパに豪華なおかずを入れて持たせてくれたりもした。この夫婦に招待されて品川プリンスで食事をしたこともある、本当にいつも気に掛けてくれた。

さらには負けて帰る時に階段までママが送ってくれて、エプロンから一万円を寄越したこともある。だが、さすがにこれは断った。

仕舞いには翌年から授業時間限定で出入り禁止にされた、雀荘を出禁になったのは後にも先にも初めてのことだ。

当時はこれ以上はないというくらい麻雀に狂っていた、だからだろう、田舎から出てきて<東京の両親>のような人を見つけることが出来たのが雀荘というのはある意味必然なのかもしれなかった。

「もうすぐ入れるからちょっと座ってて」

マスターに声を掛けられる。オレが入ることになるのは地元の自営業のオジサンと近くの大企業のサラリーマン、この店のメイン客層の卓。

五分ほど待って卓へ、だがどうにもこうにもチグハグな感じだった。縦のキャッチも横のキャッチも上手くいかない、こんな状態で点棒が入ってくるほど甘いゲームでもない。

何回か連続で逆連帯を繰り返す、「ハァ」と自然とため息が漏れる。

「ちょっと、ため息ばっかりついてどうかしたの?」

ママに聞かれる

「あれ、ため息そんなついてました?いや、何でもないッスよ」

空元気でそう答えた。

「若い男がこんな悩むって言ったら…、オナゴのことだろ?」

テンパイ気配を察知したり他人の気分を害することに関してまったく鈍感な対面のオジサンが口を開く、こんな時だけはやたら鋭い。

「あら、そうなの?若いっていいわねぇ」

ママが笑う。

「ホントにそんなんじゃないですってば、けどどうにも元気が出ないのでこれでラス半にします」

そう告げて麻雀に集中しようとする、だが最後まで入り込むことは出来なかった。この日は―、結構負けてしまった。

「隠し事しちゃダメよ、何でも言っていいんだからね」

帰り際ママにこんなことを言われる、ホントにどうしたんだろうか?

「明日には治りますよ、じゃあまた」

店を出て帰りの電車へ乗る、もう帰りたかった。すっかり暗くなった景色を車窓から眺める。

実は―分かっていた。卓についていた時から彼女の、セナのことばかり考えていた。

この気持ちは何なんだろうか?自分でもよく分からないのだが意識はどうしても勝手にそちらを向く。

自分に言い訳を繰り返しているが、自分に嘘はつけない。彼女にコンタクトを取ることにした。

携帯を取り出す、が、何て書けばいいかさっぱり浮かんでこない。

結局、家に着いてもまだ悩んだ末にこんなメールを送った。

<件名:今日の実戦譜より>

<本文:親の8巡目 33557(34567)五六七 ツモ4 ドラは7です、何を切りますか?>

さんざ悩んだ挙句のメールが<何切る問題>、勇気を出してメールを作ったものの、こんなものでどうしたいのかは―

この時自分でもよく分かっていなかった。
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