バードの麻雀雑記帳

天鳳(チャオってなければ鳳南に居ます)やその他の麻雀記事を集めた雑記帳です、乾きまくった麻雀砂漠に水を掛けてやりたい…

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
このページのトップへ

ラストスマイル 第2話

体が相当疲れていた、だからかチェックアウト時間などまったく意にも介さず寝てしまった。目が覚めてようやく「あぁ昨日ホテルに入ったのか」と思い出した。

ベッドの隣にセナは居なかった。

「おはよう、起きた?」

洗面所の方から声を掛けられる。

「うん…、今何時?」

「もう10時だよ、チェックアウト時間なんだけどあんまりぐっすり寝ているから起こさなかった」

「そうだったんだ、まったく起きようという気すらなかった」

こんなことを言うと洗面所から「ふふ」という彼女の含み笑いが聞こえてくる。

「何がおかしいの?」

「いや、ようやくタメ口にしてくれたんだなぁと思って」

たった一晩寝たくらいで<自分の女>のつもりにでもなったんだろうか?そんな自分に赤面しそうな思いを抱くが慣れない敬語を使うのも確かに面倒になっていた。

「もう―敬語はやめるよ、これからどうしよっか?」

この話題が続くとまた気恥ずかしいような気持ちになりそうで無理矢理話題を変える。

「お化粧が後二十分くらいかな、シャワーでも浴びてきたら?」

「じゃあ、そうするか」

洗面所の脇を通る時に彼女の顔をちらりと盗み見る、向こうも見ていたようで鏡越しに目が合うがすぐにオレが逸らしてしまう。その日初めて見た彼女の顔はやはり綺麗だ、昨晩のことを思い出すと―少しだけ胸が高鳴る。

シャワーから出ると彼女はすっかり身支度を整えてベッドに座っていた。

「今日学校は?」

出し抜けにそんな話をされて一気に現実に引き戻されたような気分になる、だが今はすっかり目は覚めているもののこれが夢ならその続きをもう少し見ていたくなった。

「そんな期待されている学生でもないから自主休講、君は?」

「私は…特に何も無いよ」

願っても無い答えが返ってくる。

「じゃあさ、麻雀でも打ちに行く?」

「実はそう言ってくれたらいいなって思ってたの、今日は負けないから!」

とびきりの笑顔で言われるとなぜか嬉しくなる、そうと決まれば話は早い。ホテルをそそくさと出た。

池袋の街はいつも通りの時間を刻んでいた、いつもはこの街の喧騒が嫌いでイヤホンが外せない。だがこの日はそんなこともない、いつもは一人の麻雀を打ちに行くだけの道中であるが隣には昨日出会ったばかりの彼女が居た。

「そういえば腹減った?」

彼女に尋ねる。

「うーん、そういえば少し。」

腹をさする仕草もいちいち可愛らしい。

「オレは何でもいいんだが君の嗜好がまったく分からない、何がいい?」

「なんでも、吉野家あるから入っちゃう?」

確かにすぐ先におなじみの看板が見えた。

「オレはいいけど君は牛丼っぽくない顔をしてるけどね」

「そんな顔ないよ、ほら行こう」

彼女が先に入っていく、行動的だなぁと思いつつ後に続く。

昼前の店内はまだ閑散としていた。

「オレは並を、君は?」

「私も並かな、けどいつも食べきれないんだよね。あっおビールはいかかですか?」

にこにこしながら聞いてくる。

「頂きましょう」

そんなことを言ってくれるコがオレは好きだった、というよりかは居て欲しいと思っていた。そういえば昨日から初めてのこと尽くしだ、まだよく知らない彼女に自分がどんどん惹かれているのが分かる。

ビールを飲みながら牛丼を食べる、彼女の箸は遅々として進まない。元々少食なのだろうか?それともやっぱりこの店じゃなかったんだろうかと思ってるとおもむろに彼女が口を開く。

「やっぱりさ、昨日と同じ店じゃないほうがいいよね?」

なんだ、そんなことを考えてたのか。

「そりゃそうだよ、二人で行ったら<いかにも>って感じだもんね」

彼女の言うとおりだ、何もあの店に居る常連たちの下司な好奇心を満たしてやる必要はない。

「だよね?私同じ服だからさすがに恥ずかしいなって…」

そんな視点もあったかと思う、今更ながら一緒に居るのが女性だという当たり前のことに気付かされた気がした。

「まぁブクロなら雀荘は腐るほどあるからね、―もう食べない?」

「うん、もうお腹いっぱい」

「じゃあ出よう」

しばらく街を徘徊して選んだのは駅の近くの百貨店の隣のビルにある店だ。看板に<現代麻雀広告掲載店>とある。レートは昨日の半分、五十円の店だった。

「ここでいっか、行ったことある?」

「ないなぁ、けど麻雀出来ればどこでもいいよ」

こんな会話をしつつ中へ、エレベーターがなぜか薄暗かった。

もう何十軒も行っているが新規の雀荘に入るのは毎回緊張する、しかも二人連れというのも初めて。意を決して扉を開く。

「いらっしゃいませぇ~!」

やたらと威勢のいいメンバーに迎えられる、そのテンションに些か気圧された。「二人とも新規で」とだけ伝えると「それではこちらでルール説明をさせて頂きます」とまたデカイ声で待ち席に案内された。昨日の店に比べたらだいぶ広いが時間帯なんだろう、二卓程度しか立っていない。

「当店は東南回しの半荘戦となっておりまして…」

お決まりの説明が始まる、どこにでもあるような普通のルールだった。

「今日は麻雀デートですか?」

説明が終わると先程のメンバーがそんなことを聞いてくる、長身で浅黒い肌をした彼はオレより少し年上だろうか。雀荘と言うより海でサーフィンをしてるような印象だ、インドア派で蛍光灯の光しか浴びてない自分はこんな人の前だと少し気後れしたような気分になる、女性と一緒だと尚更だ。

「えっ?まぁ…そうですかね」

モジモジしながら答える、ふと彼女を見るとなんともニヤニヤした顔でこちらを見ていた。なんだかいろんな意味で恥ずかしくなった。

「彼女さんはなんか顔赤いですね、大丈夫ですか?」

今度は彼女に問いかける。

「ええ、緊張しちゃって…」

澄ました顔でそんなことを言う、「さっきビール飲んだからだろ?」と言ってやりたかったが黙ってた。しかもそう言いながらこちらに笑顔を見せる、あぁ…<女はしたたか>ってこういうことなんだろうか?

「じゃあツー入りで卓立てますんでこちらへどうぞ」

そんなことを考えていると声を掛けられる、どうやら新しい卓を立ててくれるらしかった。

「お連れ様同士なので東西のつかみ取りでお願いします」

そんなルールがあったな、と思い出す。彼女に先に引くよう促すと西、オレは今居る場所に一番近い席にした。

ふと、「いいところを見せたい」などと思う。だがそんなことを思ったところで上手くいかないのが麻雀ってことはここ二年で嫌というほど分かっているつもりだ、「何をくだらないことを」、頭から追いやる。

「よろしくお願いします」

おざなりな挨拶を交わしこの日の、いやこの日もか。また麻雀が始まる。

オレは、いつもより少しだけ慎重にサイコロボタンを押した。
関連記事
スポンサーサイト
このページのトップへ

コメント

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

トラックバック URL
http://thebirdmen.blog.fc2.com/tb.php/57-f94feabf
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)
このページのトップへ

FC2Ad

プロフィール

バード(メン)

Author:バード(メン)
訪問ありがとうございます、天鳳やその他麻雀関連のブログです。天鳳で起こった出来事や麻雀を軸とした物語を実話だったり想像で書いています。天鳳ID:焦燥のバラッド(八段、鳳南民)

最新記事

最新コメント

最新トラックバック

月別アーカイブ

カテゴリ

未分類 (0)
自己紹介 (1)
読み物 (61)
初フリー~列伝 (4)
天鳳系 (24)
麻雀恋愛小説ラストスマイル (12)
ある日の天鳳 (5)
バードのフリー入門 (4)
嬢との麻雀 (4)
大阪編 (7)
<番外編> 競馬場に咲いた花 (3)

天気予報


-天気予報コム- -FC2-

飛来してくれた方

ツイッター

検索フォーム

RSSリンクの表示

リンク

このブログをリンクに追加する

ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード

QR

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。