バードの麻雀雑記帳

天鳳(チャオってなければ鳳南に居ます)やその他の麻雀記事を集めた雑記帳です、乾きまくった麻雀砂漠に水を掛けてやりたい…

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ラストスマイル 第1話

この物語はフィクションであり実際の個人や団体とは一切関係ありません。


台風が猛威を振るうある日久々にある人から連絡を貰った、それは旧知の麻雀仲間からだった。もう知り合ってから六年くらいになる、話したのはもういつぶりだろう?最後はもう思い出せないくらい昔のはずだ。

出し抜けに言われた言葉、何年かぶりのそれはオレにとって驚きを隠せないものだった。

「実は、離婚しちゃってさ。私と子どもの二人になったんだよね…」




彼女と初めて会ったのは池袋の雀荘だった、オレが学校の帰りにフラッと入ったある店でたまたま同卓した時のことだ。

オーソドックスなルールの東南戦の店、彼女が居る卓にオレが入って麻雀を打った。何本か打って思ったのは「押し引きがはっきりしているなぁ」ということ。攻めるとなったらどこまでも攻め込んで来るし、オリとなったら地獄待ちの字牌すら出さない。オンとオフがこんなにはっきりとした打ち手も珍しく思えるくらい攻守の切り替えが上手であった。

自分なりの美学を貫いているような印象を受けた、だがある半荘のオーラスに自分がトップ目だったのだが3着目の彼女があっさりと仕掛けて1,000点であがった、ちょっと拍子抜けしたような感じだったが自分がトップで終了した。

その後彼女が帰ってオレは後一本打って店を出た、エレベーターを降りて外へ出ようとするとエントランスで先程の彼女に声を掛けられる。

「あっ、どうも。さっきの仕掛けってどうでした?」

こんな第一声に最初は戸惑ったものの、よくよく聞けば先程のオーラスのことを尋ねているらしかった。

「まぁ自分はトップだったんでいい終わり方でしたね」

思ったままを答える。

「ならよかった、トップで終わったのにちょっと驚いたような顔してたから気になっちゃって…」

「いや、気にしてなんかないですよ。楽しかったです、じゃあ」

さっきは気づかなかったが改めて顔を見るとかなりの美人だ、もう少し話していたいような気もするがこれ以上間も持ちそうに無かった。

「あっ、ちょっと待って。この後ヒマですか?焼き鳥の美味しい店知ってるんでよかったら行きませんか?」

唐突なお誘いに戸惑う、だが彼女の印象と焼き鳥屋のイメージがどうしても繋がらず面白そうだなとも思う。

「焼き鳥いいですね、行きましょう」

若干話が出来過ぎている、と思わないでもなかった。が、雀荘付きの美人局もないだろうと池袋の繁華街へ。誘われたこちらの仄かな疑念をよそに連れて行かれたのはいわゆる「赤ちょうちん」の店だった。

「生二つと適当に焼いてください、あっ生でいいですか?そういえば私セナって言います」

自己紹介をする、名前も知らない人と飲みに行くなんて珍しい経験だ。共通点と言えば麻雀、しかもそれだけ、思えば不思議な話だ。

「はい、生二つお待ちどおさん。あれ、今日はお連れさんが居るんですね」

店の若いマスターの言葉に彼女は「やだ」と返す、「適当に焼いて」にそれを感じるがどうやら彼女はこの店の常連のようだ。

「乾杯!そういえばいくつなんですか?」

「22です」

「なんだ、私のほうが年上なんだね。私は23、でもタメ口でいいから。大学生?」

大学名を告げる、彼女は「ふぅん」と返しながら髪をいじる。後々それが癖なのだと知るが、この時はさほど興味はなさそうに見えた。

「そういえばさ、さっきの一緒に打った2回目の東パツなんだけど…。いや、まずは麻雀歴から聞こうかな。」

ミュージシャン同士が初対面で「今まで何聴いてきた?」と聞きあうように麻雀で知り合った我々は麻雀との出会いから話すのが自然のようだった。

「フリー行き始めたのは二十歳くらいかな、それから三日とあけずに打ってますよ。もっと早いんスか?」

年上と聞いたとたん変な敬語で話し出す、これはどうしても抜けない自分の癖のようなものだ。

「私はねぇ、前の仕事が結構儲かる仕事だったんだけどすごい高レートで麻雀打つのね。最初は悔しくってリベンジしては返り討ちにされててさ、それでいろいろ学んでようやく最近負けが減ってきたかも。あっ、私もそんなことしてたの二十歳くらいの頃だよ」

「なるほど、気が合いますね。次も生でいいですか?」

「もう、タメ口でいいって。すいませーん、生二つ下さい」

ビールと焼き鳥の相性については疑いようもなかったがこの日も美味い、そういえば今日初めての食事がこれだということに気付く。麻雀に狂い出してからこんなのばっかりだ。

「あぁ、それで何でしたっけ?2回目の東パツでしたか」

空きっ腹に流し込んだビールが思いのほか効いてきたところで話を向ける。

「うん、あの時の手牌ってどんな感じだった?」

「あれ?どんな感じだったかなぁ。その局ってどういう終わり方でした?」

「私ともう一人の二人テンパイで流局、君はノーテンだった。」

すっかりアルコールが入った頭で思い出そうとしてみる、だがその手牌よりも「キミ」という呼び方になぜだがドキドキしていた。

「あー、思い出しましたよ。ピンフ系の手牌を手なりで進めていたけど終盤近くに初スジを1枚ずつ持ってきてオリましたね、確か2-5ピンだったかな。」

「やっぱり!私2-5ピンのダママン張っていたんだけど君に止められた気がしていたんだよね。どうして分かったの?」

「たまたまですよ、自分がクズ手だからオリただけです。あぁ、多分その半荘だと思うんですがラス前のリーチってどんな受けだったんですか?」

「あれはね、8ピンと二萬のシャンポン。すごくいいと思って曲げたらあがれなかったね、あっまさか止めた?」

「止めたと言うか…8ピンすぐ掴んでるんです、リーチって言われたから止まっただけで危なかったなぁ」

「また!けど役がないから仕方なかったんだよね」

こんな話が続く、ほんの数時間前のことなのに早速忘却の彼方へ行こうとしていたさっきの麻雀の記憶が話していると蘇える。麻雀は一人で打ちにいく、だからこんな振り返る機会が珍しくてなんだか嬉しい。

思えば、フリー雀荘で同世代の女性と打つ機会などなかった。行く店が悪いせいかもしれないがどこに行ってもだいたい自分より年上の人と打つことが多い、よく店の常連のオバサンなどはいつも男のオレにしょうもない下ネタを振ってくる。「照れちゃってかわいい」なんて言われても全く嬉しくない、だがそんなくだらない卓外戦術にすっかりやられていた。そういえば今日行った店だって雑誌などで広告を打っているいわゆる<爽やか>さを売りにしている店でもない。

「なんであんな店で打ってたんですか?」

ふとした疑問を口にする

「出来れば知らないとこでたくさん打ちたいんだよね、だってそれがフリー雀荘の魅力でしょ?」

「あぁオレも一緒ですよ、もう何十軒も行ってますから」

「えっ、まだ二年くらいで?すごいね、どんな店行った?」

またそんな話にひとしきり花が咲く、アルコールの力も加わってかなり自然に話せるようになっていた。

「あっ、もう十二時半なんだ。そういえばどこ住んでるの?」

「横浜です、帰れないならそれはそれでいいですよ」

「また麻雀打つの?」

「うーん、それは最後の手段ですよね。どうしよっかなぁ、まぁ取りあえず出ますか。帰れるんですか?」

「私?私埼玉だから実はもうとっくに帰れない、だから出来れば朝まで付き合って欲しいんだ」

こんな話を受け外に出る、そろそろ秋になろうかという時期で少し涼しくなって来た空気が上気した顔に心地よい。

朝まで居られるだろうということで近くのカラオケ店へ、フリータイムが無いとのことだったが無駄に歩き回るのも面倒で取りあえず入室した。

お店の人が気を利かせてくれたのか部屋はブラック・ライトで照らされたなんとも薄暗いとこだった。「何か歌ってよ」とリクエストされてロックのスタンダード・ナンバーを歌う。

「歌上手いね」

「バンドやってましたからね、けど最近は全く。もっぱらこっちばっかりですよ」

牌をツモる仕草をすると彼女はクスッと笑う、何故だろう?会ったばかりの彼女がどんどん魅力的に見えてくる。

その後はまた酒を飲みながらいろんな話をした、バーボンを飲んだりタバコも雀荘から吸いまくったせいか喉がいがらっぽくてもはや歌を歌う気分でもない。それよりも麻雀の持つ神秘性を語っている内に、それ以上に怪しく光る彼女のそれにオレはすっかり魅せられてしまっていた。

「もう出ますか?」

「そうだね」

当てもなくカラオケを出る、彼女はすっかり酔っ払ってしまったのかオレの腕にしな垂れかかってくる。肩くらいに彼女の体温を感じる、シャンプーの香りだろうか、なんとも言えないいい香りが鼻腔をくすぐる。

気付けば、いや、そちらにオレが仕向けたんだろうか。池袋のホテル街を歩いていた。

<流れ>というものが麻雀にあるのかは分からない、しかしこの場面ではこのままどこぞのホテルに入るのが流れであるかのように自分勝手に思っていた。

ある一軒のホテルの前で足を止める。

「…入りません?」

「…いいよ」

部屋の選択なんて面倒な手続きがあったが適当な部屋を選ぶ。思えばオレの最近の日々は全部が適当だった。学校に行ったり行かなかったり、食事もしたりしなかったり、寝たり寝なかったり。そんな適当な自分にはこんな恋の始まり方があってもいいのかとどこまでも自分勝手に思うことにした。

部屋に入る、こういうとこでありがちな安っぽい部屋だった。縺れるようにベッドに倒れこむ。実際―もう眠たかった。

「私と打った最後の半荘ね、君がトップだったからあんな仕掛けしたんだよ」

「それはどうも」

耳元で囁かれると眠たいとは言いつつ変な気分になってくる。

「後さ、いつもこんなことしてるなんて思わないでね」

「どうでもいいよ」

もう言葉を交わすのすら煩わしいというように唇を重ねる。

こうして―、出会ったその日にセナと寝た。
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訪問ありがとうございます、天鳳やその他麻雀関連のブログです。天鳳で起こった出来事や麻雀を軸とした物語を実話だったり想像で書いています。天鳳ID:焦燥のバラッド(八段、鳳南民)

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