バードの麻雀雑記帳

天鳳(チャオってなければ鳳南に居ます)やその他の麻雀記事を集めた雑記帳です、乾きまくった麻雀砂漠に水を掛けてやりたい…

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ラストスマイル 第12話

セナがプロになり活動を始めた、週末はリーグ戦などに出つつ各地の雀荘へゲストで行っているようだった。

休みの日は大体一緒にいることが多い、ある日プロに撮ってもらったという宣材写真が出来たらしく見せてもらった。

「なんかお化粧濃くない?キャバクラ嬢みたいだな」

普段とは趣の違う姿に少しドキッとしていたのだがその緊張を悟らせまいとオレはこんなこと言った。

「そう?カメラマンの人に褒めてもらったんだけどなぁ、かわいくない?」

彼女がこんなことを聞いてきたので

「かわいいよ」

素直な感想も言っておいた。判官贔屓の感は否めないだろうが同期で受かったどの女性よりも彼女は綺麗だった。

「こうやって見てると芸能人みたいだよね」

屈折したことを言うだけでは芸が無い、さらに褒める。

「ホントに?嬉しいなぁ、実は昔ちょっとだけオーディションみたいなの受けたことがあるんだ。ショックなこと言われて諦めたけどね」

「何て言われたの?」

「…ポルノ・スターにならすぐしてやるって」

「…随分質の悪いジョークだね」

当時はその下衆な冗談を笑い飛ばすことも出来なかった、ただ嫌悪感だけがあった。だがその後自分が芸能業界で働くことになり、その類の話が星の数ほど転がっている現実をその時は知らなかった。

「君はそこの団体の誰よりも綺麗だと思うよ、今度ゲストしてる店に打ちに行って見に行かなきゃ」

慰めるつもりでもなかったがこんなことを言ってみた。

「えっ、ホントに?いつ来てくれるの?」

彼女のテンションが急激に上がって思わず面食らう。

「えっ、まぁ…いつでもいいよ。あぁ、あんまりお客さん居ないの?」

麻雀はいつも打っているのでどこで打とうが関係ない、だがオレが行くことで少しでも彼女の面子が立つなら行ってみようという気になっていた。

「あぁ、元々その店で打ってたお客さんが殆どだよね。けど私がゲストに行ってる店に毎回来てくれる人も居るよ」

「なんだ、ファンいるんじゃん。ファンは大事にしたほうがいいよ」

「ファンなのかな?でも中にはちょっとキモい人とかも居るしなぁ」

新人プロに既にファンが居ることも驚きだったし「中には」ということは最低でも複数居るらしいということにも驚いた。

「なんかそんな人たちと打つのちょっと気後れするなぁ、どの面下げてというか…」

「なんで?いいじゃない、<オレの女>くらいに言ってくれていいよ」

彼女から<オレの女>なんて言葉が出てまたドキッとする、そういえば彼女のことはまだよく知らないままだった。

しかし、何を知ったところで彼女の過去を変えられるわけでもなくこれからの時間しか共有することは出来ない。

正直言うとたくさんファンが居ると思うとなんだか不安に似た感覚もあった、なんとも恥ずかしい感情だった。

やはり、ここで悶々としているくらいなら一度行ってみるしかない。

「…じゃあ次のゲストの店に行ってみるよ」

「やったぁ、嬉しいな」

次回ゲストは3日後で池袋にある雀荘のようだった。

ただ麻雀を打ちに行くだけなんだが…、この時はどこか不思議な気持ちが胸いっぱいに広がっていたのだった…。
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ラストスマイル 第11話

セナのプロ試験日になった。

話を聞くと一日潰れるらしく終わってから一緒に酒を飲む約束を取り付けオレは午後から大学へ、2つの講義をただ座っていただけで終えると横浜へ戻った。

相鉄口近くの居酒屋へ、駅が近いということもありかなりの頻度で利用している店だ。そのせいか店の従業員にもすっかり顔を覚えられている。

待ち合わせだということを告げ1人で瓶ビールをしばらく飲んでいるとセナがやって来た。

「ゴメン、待った?」

そう言って近寄ってきた彼女はグレーのパンツスーツ姿だった、長身の彼女はとても様になっている。初めて見るその姿にオレは内心のドキドキを隠すように「いや、そんなに待ってないよ」とぶっきらぼうに返すと手で対面の席へ座るよう促した。

「無事試験が終わったということで乾杯」

こんな台詞と共にグラスを合わせる、彼女はよほど喉が渇いていたのか一息でグラスのビールを飲み干した。

「えーとね、自分で言うのも変な感じだけど多分合格すると思うよ」

オレが2杯目のビールを注いでいると彼女はそう言った。

「あぁ、よかったじゃない。筆記と実技と面接だっけ?そんなに上手くいったの?」

「筆記は答えがある問題は全部出来たと思うし実技は全連対、面接でも周りのコにルックスで負けてるとは思えなかったからこれは受かるでしょ?って思っちゃった」

「そうかぁ、じゃあプロ雀士セナの誕生だね。もう一回乾杯しよう」

オレがグラスを掲げると

「ありがとう、乾杯」

彼女がグラスをまた合わせてきた。

以前は特段プロになることにメリットを感じなかったから反対するようなことを言ったけど今は上手くいったと聞いてそれはそれで嬉しい。

彼女も試験が会心の出来だっただけにいつもよりテンションが高い、2人でかなりのハイペースで瓶ビールを消費していった。

「そういえばさ、一緒に受験した人で点数計算が出来ない女のコがいたよ」

試験の話をしていると彼女がこんなことを言った。

「えっ?プロ試験でしょ?信じられないな」

驚きを隠せない。

「なんで来たんだろうね?あぁ、お記念受験ってヤツかな?」

「麻雀プロのお記念受験ねぇ、なんかよく分からないな」

公式戦のオーラスとかで点数が分からない、そんなことはあってはならないことだろう。

「まぁ、そういう人は残念だけどダメだろうね」

こんな話をしつつ酒を飲む、この日はかなりハイペースだったせいか2人とも思いのほか酔っ払っていた。

「さて、これからどうしようか。麻雀するには飲み過ぎた気がするなぁ」

「ねぇ…君の家行ってもいいかな?」

オレの質問に彼女は上目使いでさらに質問をかぶせてくる。

「もちろんいいよ、あっけどスーツしかないのか。まぁオレの服を着るといいよ」

「ううん、着替えは駅のコインロッカーに入れてきてあるの。もし君に断られたらそのまま持って帰ろうと思ってたんだ」

こんなドキッとするようなことを言う。

「…バカだな、オレが居なくたって来ていいのに。じゃあ出よう」

「うん」

駅で彼女の荷物を取ると我が家へ向かう。家までの歩き道、彼女は余程疲れていたのかずっとオレにしな垂れかかっていた…。

寝る仕度を整えていつものシングルベッドに2人で横たわる、電気を消した。


「そういやさ、合否っていつ分かるの?」

「1ヶ月後って話だったよ」

「随分焦らすね、遅延行為はご遠慮くださいって話だよな。まぁ君は大丈夫だろうけど」

「だといいな。もし受かったら君のおかげだよ」

「えっ?オレは何もしてないよ」

「私がそう思ってるんだからいいの」

「ならそれでいいや」

「ふふ…ありがとう、オヤスミ」

彼女はそう言うと暗闇の中キスをしてきた、「こんな大胆な一面があったんだ」と思う。

「オヤスミ」

と何とか返すとその後会話は無くなった、しばらくすると彼女の寝息が小さく聞こえてくる。

オレはそれを聞きながらなんだかドキドキしてしまっていた、その晩は中々眠りに着くことが出来なかった…。


そして、1ヵ月後―

予想通り彼女の元に合格通知が届いた。これはまぁ順当な結果だろう、それより驚いたのは例の点数計算が出来ないコも一緒に合格したということだった…。
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ラストスマイル 第10話

席順は上に彼、対面がセナ、下にプロ。

女流麻雀プロと打つのが初めてなのでとても興味があった、ふと見てるとなるほど、手つきなどはやはりとても上手だ。

だが店の責任者という立場からだろうか、常に店内をキョロキョロしていた。これではあまり対局に集中出来ないんじゃ?という思いがあった、たった1本でも真剣勝負がしたかったからそれは少しだけ残念だった。

ラス半は相変わらずオレがちょこちょこあがってトップ目に、上の彼は相変わらず甘い牌を下ろしてくれるから鳴く手は鳴いて曲げる手は曲げてあがる、という好調なペースを保てていた。

そうこうしてあっという間に南パツセナの親番、ここさえあがり切れば大分楽になる。早々に2000点の仕掛けを入れていた。

すると彼女が―

「ツモ」

と言って静かに一を置いた、そして

「12000オールです」

と言った。

一二二三三三三五六七七八九  ツモ一 ドラ七

ツモ、メンチン、ピンフ、イーペーコー、ドラドラは文句なしの三倍満。

「…はい」

ワンテンポ遅れて点棒を支払う、自分の手が入り方によっては四が出て行く格好だっただけに肝を冷やした。

だがこの瞬間からオレの意識は2位に向く、フリーはトップ取りが基本だけど36000あがった人に追いつこうとは思わない、いや思えない。

そこからはベタオリしたり捌いたりして対局はいよいよオーラスに。

ダントツがセナ、2位がオレ。プロはかなり離れた3位、ラス目の彼は3000点しかなかった。4000オールでは順位が変わらない、直撃を許す牌を打つ気はなかった。

「こういう時ってどう打つんだろう?」

ふとそんなことを思いつつ摸打を繰り返す、オレは一切鳴かす牌を下ろさないように打った。コンビ打ちだと思われたくもなかったけど、誰と打っててもこう打つんだから気にしないことにした。

彼女も似た感じで打っていたと思う、上の彼は手を作るしかないようで中張牌を2つプロにポンさせていた。オレ(セナもだろうが)はその仕掛けから6000オールの可能性を考えていた。

だが、いろいろと考えてはいたものの対局は呆気なく終わる。彼の打った(8)にプロが手牌を倒す。

「ロン、5800です。ラストで~す」

5800は3位のままだった、一瞬「あれ?」と思ったけど「まぁそうするよな」と思った。打った本人の彼は「あちゃー、いい手だったのに間に合わなかったかぁ」と笑っている、特に気分を害した様子もない。

約束の4回が終了、精算して帰ろうとするとプロがエレベーターまで見送ってくれた。

「ねぇねぇ、彼女どこかの雀荘で働いてたりする?今ウチさぁ、打てる子居なくてチョーピンチなの。ねっ、ウチで働かない?週1でもいいからさ」

オレのことはほぼ無視してこんなことを言い始める、彼女を見ると困ったような顔をしてた。

ちょうどエレベーターが来たので彼女を促すように先に乗せるとさっさと「閉」ボタンを押す。

「新規の客捕まえていきなりリクルートってなんだよな、もう2度と来ないね」

扉が閉まった瞬間に憮然としながらそう言うと

「君もさ、若い子に色目使っちゃってなんなの?」

「えっ?」

急にそんなことを言われてしまう、彼女は見たこともないくらい怒ったような顔をしてた。

「いや、その…すいません」

慌てて形ばかりの謝罪をしていると1階に着いた。

そんなに長居したつもりもなかったが渋谷の街はすっかり夕方になっていた。

「さて、どこに飲みに行こう?」

こう言いながら彼女の顔を見るともう怒った表情はすっかり消えていた。

「そういえば今日2人とも全連対だね」

確かにそうだった。

「今日に関しては最強コンビだね、けど大して儲かってないんだよなぁ。これだからゲーム代負けしに行くのはイヤだって言ったんだ」

素直に喜べばいいのにこんな憎まれ口を叩くと

「まぁ、勝ったからいいじゃない。今日の勝ち分で出来るだけたくさん飲めるトコ…、あっ、私センターで安くて美味しい店知ってるからそこに行かない?」

こんな提案をしてくれた、その瞬間なぜか「自分はこんな人と付き合いたかったのかもしれない」と思った。

「どうしたの?イヤ?」

「ううん、イヤじゃないよ」

「じゃ、行こう」

彼女が腕を組んでくる。伝わってくる体温にどこか今までと違う感覚を覚えたような気になりながら―

2人でスクランブル交差点を渡ったのだった…。
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ラストスマイル 第9話

プラトニックな夜を過ごした後、しばらく間が空いた。しばらく、と言っても時折会っては麻雀を打ったり酒を飲んでは爛れた時間を過ごしてはいた、のだが。

やはり彼女はプロ試験を受けることに決めたようだ、結局オレは少しだけ止めるようなことを言ったもののその言葉に意見を曲げさせるような力はなかった。

ならば仕方ない、言うことは言ったのだから後は応援することにした。

そんな―試験まで後1週間という時期、彼女から渋谷に呼び出される。

ベタに過ぎるハチ公前で待ち合わせ、ぴったりの時間に行くと既に彼女は居た。オレが近づいて行くとナンパ目当ての男たちに「ライター借りていいですか?」と話しかけられているとこだった、「やあ」とオレが話しかけると男たちは残念そうな顔をして居なくなった。

「渋谷なんてどうしたの?東風であっという間に稼いで美味しいものでも食べに行こうって?」

多分麻雀を打つんだろうなとは予想していたので聞いてみると

「ううん、行きたい店があるの。50円の東南の店なんだけど」

こんな返答だった。

「えー、渋谷くんだりまで来てゲーム代負けすんの?気が進まないなぁ」

「それがね、今度受験する団体の所属プロと打てるらしいんだ。もし君が負けたら私がパオるよ、しかも君が喜びそうなギャル雀だしさ、ね?行こうよ」

「ギャル雀ねぇ、あんまいい印象ないんだよなぁ」

こんな会話があった。

あれは確か―、そんな昔の話じゃない。五反田に行った時のこと、いつも通り「麻雀」の看板が出ている店に新規で行った。そこで「ダンプ」と呼ばれていた女性メンバーと麻雀を打ったことがある。

多分体格がいいからそう呼ばれているんだろうがまっ金髪にエプロンをした彼女は、タトゥーだらけのブッとい腕で毎回強打していた。

麻雀はそれなりに達者だったと思う、が、如何せん愛想が悪い。ある局オレが親番でダマインパチをダンプからあがったら点棒を放り投げられる、やはり気分はいいものではない。

それ以来、その店に行くこともなくなった。

こんな話を彼女にすると

「それってギャル雀じゃないんじゃない?」

と言われる。

「ギャル雀の定義は女性と打てる店ってことじゃないの?ダンプはある意味オレより男性的だったけど生物学的には確実に女性だったからね」

「うーん、多分今日行く店は違うと思うよ。ねっ、お願い。行こうよ」

「そうなのかなぁ?じゃあ裏表2回ってことならいいよ」

予め住所を調べていたようだ、歩き始めると迷うことなく目的地に連れてってくれた。オレが渋谷で打つ時は駅近の東風で財布の中身を倍にするか0にするかしかなかった、「こんな場所にも雀荘があったんだな」と思っていると着いた。

「いらっしゃいませぇ~」

ドアを開けると若い女性メンバーが迎えてくれた。

「あれ?」

と思う、パステルカラーを基調にした店内は清潔感に溢れていた。しかも店内には女性メンバーしか居ない、何から何までもダンプの店とは違っていた。

「新規なんですけど」

「かしこまりました、同卓と別卓どちらがよろしいですか?」

セナの方をチラッと見てから

「どっちでもいいですけど4回限定です」

こう言った。

「ご新規のお客様です、同卓はどちらでもいいそうで~す」

応対をしてくれたメンバーが本走中の別のメンバーに伝える、

「了解です、ユミちゃん、じゃあルール説明終わったら4卓立てちゃってください」

「は~い」

本走中のメンバーが指示を出す、あの人が話に出た「プロ」なんだろうか?

「じゃあルール説明をさせて頂きます、当店は―」

お定まりの説明が始まる、ルール表も渡されていたので肝心な何個かだけ確認して後はずっと聞き流す。

ルール説明が終わると卓が立てられた。

「こちらのお2人はご新規のお客様です、よろしくお願いしま~す」

こんな紹介をされて対局開始、面子はオレとセナ、オレより年下の学生風の彼と好々爺然とした初老の男性だった。

打ち始めてすぐ気付いたのは…、セナはいつも通りだが脇の2人は初心者同然ということだ。攻めているのか守っているのかまるで分からない、終盤にポロッとかなり危険と思われるロン牌が出てあがれたり。

「あれ?これはひょっとして…」

相当楽な展開なんじゃないかと思う、見ていても仕方ないから手出しツモ切りなんて見るのをやめた。自分の手牌だけで押し引き判断が出来るのだからやはり楽なものだった。

緒戦はオレがトップ、セナは2着。

2回戦目に入った東パツ、上の彼が携帯を取り出す

「あっ、親からだ。この電話は出ないとやばい。ユミちゃん、ちょっと代走して」

「えっ、あぁ、分かりました」

彼は同卓者には下手なのにユミちゃんにだけはこんな口調だった、そう言ってユミちゃんと代ると彼は急いで店の外に出て行った。

「あの…、まだ麻雀勉強中なのでよろしくお願いします」

卓に入るなりユミちゃんがそう言う

「あっ、そうなんですか。分かりました」

こんな返事を。麻雀が分からない状態の時に雀荘で働いてると麻雀打っている客ってどういう風に見えるんだろう?小さい牌の組み合わせに一喜一憂しながら何時間も打っている姿ってどういう風に見えるんだろうか?

そんなことを思いながらユミちゃんを眺めていると配牌を取ってからじっくり理牌、そして北を切り出す。北はドラだった、しばらくすると気付いたようで「ハッ」とした顔をする。そして即北がカブると心底残念そうな顔をして北を並べていた。

「なんだか―、可愛らしいな」

と思いながら打っていた、キー牌のバラ切りをしている。「あぁ、放銃しないように打ってるんだね」と微笑ましいような気分で打ってると

「リッ、リーチします」

と言って赤い1万点棒を取り出した。

「えっ、もうスーパーヒトシ君出動?まだ始まったばかりだから青いノーマル1000点棒でいいと思うよ」

こんなことを言うと少し顔を赤らめて

「あっ、こっちですよね。すみません、すみません」

と言いながらリーチを掛けてきた。

それを受けて困ってしまう。ドラの2丁切りから始まって面子を落としている、だとバッタや単騎が怪しい。そう思うと現物しか切れなくってベタオリになってしまった。

皆受けに回って―、流局。開かれた手は12234というペンカン3待ちだった。

「あの…、これ大丈夫ですか?」

ユミちゃんが聞いてくる、

「うん、大丈夫だよ。ちょっと想定外だったけど」

こんな会話をしながらノーテン罰符を支払う、すると電話を終えた彼が戻ってきた。

「あれ?リーチしちゃったの?代走はリーチ掛けないもんだから覚えといてね」

「すみません、すみませんでした」

とユミちゃんは仕切りに謝っている、「そんな責めなくてもいいのに…」とは少し思わないでもなかった。

結局2回戦目はセナがトップ、同性が嫌いな彼女は若干ユミちゃんにもイライラしているようでキツイ打ち方で勝ちきった。オレは大して参加していなかったが2着だった。

「電話来ちゃったからさ、オレ次でラス半ね」

上の彼が言う

「じゃあ私ももしラスにしとこうかな」

下のオジサンも続けてそう言った。

「割れるなら3回で帰ってもいいかな」と思いながら3回戦目に入る、3回戦目はオレの親番に下から高い手を2回あがってトバしてしまい東場で終了した。

「じゃ、私はこれで」

少し憮然としてオジサンは席を立つ、上の彼も帰るだろうし「あぁこれで終わりかな」と思っていた。

すると

「○○君、私そっち入るからもう1本だけ打てない?」

別の卓に着いていた例のメンバーが上の彼にそう言う

「えっ、○○○さんと打てるの?じゃあしょうがないな、1本だけ打ちますよ」

と言いながらもまんざらでもない様子で彼はまた席に着く。

少し間があって、例のメンバーがこっちの卓に来た。

「それでは改めましてよろしくお願いします」

こんな挨拶から最終戦が始まる、名札を見ると「プロ」と書いてあった。

我々も、これで目的を果たせそう。

無いと思っていた最終戦、何が飛び出すのか―

その日初めてドキドキしながら対局は始まったのだった…。
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ラストスマイル 第8話

インターネットを自宅に入れてよかったと思うのは無料で麻雀が打てることだ、しかも味気ないCPU戦ではなく人間と打てるのがいい。

このサイトでネット麻雀を始めて以来、家に居るときはよく打っている。段位が少しずつ上がっていくというシステムもアツくさせる、だが家では寝てばかりで最近はあまりやっていない。

宣言通りオレから打ち始めた、アリアリの東風戦を選ぶ。

「愚仕掛けをする」なんて言ったものだからガチャガチャ仕掛けまくる、そして十五分くらいであっという間にラスを食った。

「あちゃー、○○だったらこれで一万くらい溶けてるね」

某東風戦の店の名前を出す、彼女はクスッと笑う。

こう言ってみると確かにその通りだと思う、たった十五分で一万くらいが動くレートというのは随分と高いものだ。

卓に着いている時にはもはや金だという感覚すらない、どこで<麻痺>してしまったんだろう?

「普段ってああいう仕掛けしないよね?」

ふと、彼女がそう聞いてきた。

「あぁ、うん。仕掛けるって言った手前カッコつけたくてやってみたんだけど…、ダメだったね」

オレは肩をすくめて見せた。

「普段と違うことをしてたら練習にならないんじゃない?」

彼女の言葉は全くもって正論だった。

「そうだね…、じゃあ替わるよ。どうぞ」

パソコンの席を譲る。

「じゃあ頑張ろっかな、私は普通に打つよ」

そういうと慣れた操作で対局を始める、どうやら初めてではないようだ。

「あっそういえば音楽掛けてないから調子悪いんだよ、ちょっとI tunes起動して」

オレがそう頼むと彼女がアイコンをクリック、いつも通りランダム再生で音楽を流し始める。

このパソコンには一から再生すると丸一ヶ月掛けっぱなしじゃないと聴き終わらないくらいの音楽が入っていた。

「あっ、この曲いいよね。私邦楽って聴かないけどこの人たちって好きだな」

偶然掛かった曲に彼女が反応する

「あぁ、オレも好きだよ」

掛かったのはラブ・サイケデリコの<ラストスマイル>だった。

パソコンに入っているのは彼らのファースト・アルバムでその名も「グレイテスト・ヒッツ」というファーストとは思えない作り手の自信を感じさせるもの。だがその自信に全く負けることもなければ捨て曲もない、文句なしの名盤だった。

「マイナーのコード進行の王道って感じの曲だよね、それに詞の世界観も物悲しくって気に入ってるんだ」

音楽の話になると饒舌になる、その日のオレもそうだった。

「うんうん、他の曲もいいよね。あぁ…三位だったか、ダメだね」

そんな話をしていると対局は終了、彼女は奮戦するも3位。

「ほとんど手順はオレと一緒だったな、東二のリーチ負けが全てだよね。枚数も互角くらいだろうけど先につかんで高いの打ったらまぁ負けますよ」

最善を尽くしてリーチを掛けたなら後は先に自分のあがり牌が裏返しになっているのを祈るだけ、後は何も出来ることはない。

麻雀って詰まる所そういうゲームなんだ、今更のように思う。

「そんな酔ってる訳でもないのにね、君打つ?」

そう聞かれるが

「今日はこれ以上打ってもいい成績残せそうもないよね、麻雀はやめにしよっか?あっ、そういえばネット番組で麻雀あったな、それ見てみない?」

正直お腹いっぱいだったのでそう提案した。

「へぇ、そんなのあるんだ。うん、見てみたい」

番組サイトを開くと女性プロの対局動画がアップされていた、その動画をスタートする。

華やかなドレスを纏った四人の女性が卓を囲む、それだけで<絵>になる動画だな、そんなことを思ってた。

「てかなんでこんな長い爪で打ってんの?プロならスパーンって切って欲しいよね」

映像を見ながら彼女が言う、確かに日常生活にも支障を来たしそうな長い爪で牌を恐る恐る扱うかのような摸打だった。

「はいそこでノータイムで四切って…、あぁ、カンチャンの受け無くしちゃったよ」

同性だからだろうか?彼女の視点は若干厳しいように感じられた。「女の子と居るのが嫌い」と言っていた、そのことも関係しているんだろうか?

そして―

「ねぇ、今の見た?何あの2ピン切り?」

あるプロの打った一打はシャンテン数が下がる割に間口がとても広がるものでもない、場況に何の変化もない以上理由を聞かれても多分答えられそうも無いもの。そう、明らかな失着だった。

「あぁ…、テレビカメラがあるから緊張してんじゃないの?」

そんなコメントをする、テレビカメラの前で麻雀を打ったこともないのにその気持ちも考慮しないで無遠慮なことを言うのも違う気がしていた。

だが、一方で衆人環視の中で力を発揮してこそのプロだとも思う。

様々な思いはあった、しかしオレがプロを擁護する必要も全く無いためそれ以上は何も言わなかった。

「こんなプロだったら私でもなれそうだよね、ねぇ、これもう消していい?ちょっと調べたいことがあるんだ」

そう言うとオレの返事を待たずに動画を切ってしまった、そして麻雀プロ団体のホームページを検索する。

「あっ、ここ試験一ヶ月後にあるよ。」

ある団体のページを見て彼女が言った。

「どれどれ?あっ大手じゃん」

オレでも名前を知っているとこだ、自団体の対局に汎用性のあるルールを採用してある所だった。

「ペーパーテストと実技と面接だって、じゃあ勉強しなきゃ。ふふ、なんか大学入試みたいだね」

すっかりその気になっている。

「麻雀プロって儲かるのかなぁ?」

また飲み直したカンパリのグラスを傾けながら聞いた。

「前に雀荘にプロって人来ててさ、言ってたんだけどお給料とかって無いみたいだよ」

「えっ、じゃあ対局料っていうの?ファイト・マネーみたいのをいっぱい貰えるとか?」

「特にそういうのも無いみたい」

「ん?どうやって生活するの?」

「みんな雀荘とかに勤めてるみたい」

「なんか…じゃあプロって肩書きにあまり魅力を感じないな」

「まぁ受けるだけ受けてみようかなって話、合格するかどうかも分からないしさ」

「あぁ、そう…?」

オレが彼女の生き方に積極的に干渉する必要も無ければそんな権利もない、そんなことは分かっていた。だが特段メリットのないことを敢えてやってみようとすることに疑問のようなものを感じていた。

「この件は追々詰めるってことで今日はもう寝ませんか?実はずっと眠かったんだ」

「う、うん。じゃあもう寝よっか」

一方的に話を中断したようで悪いなと思いつつ、もう少し頭のはっきりした時に自分の意見を言いたいとも思っていた。

実際本当にもう眠い。

簡単に寝る仕度をする、そして部屋のシングルベッドに二人で横たわる。

明かりを消した、特に会話も無い。

「君は…私がプロになったら嫌?」

不意に彼女が聞く

「その話は今日はもういいだろ?」

オレは、そう言って彼女にキスをした。

「急にどうしたの?」

暗闇の中また聞かれる。

「実はね、アウトローなんだ」

そう言うと

「やっぱりね」

と返された。何も見えなかったが彼女は笑っているように思えた。

「おやすみ」

「おやすみ」

どちらからともなくそう言うとそれ以上会話は無くなった。

やはり―、彼女は言い出したら聞かないタイプのようだ。何て言おうか?まぁ明日でいいか、もう―眠い…。

その日我々は、プラトニックな夜を過ごした…。
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